2013年12月17日火曜日

ホウレンソウと石灰窒素の深い話


先日、今年のホウレンソウの収穫を全て終えましたが、疑問が残りました。
なぜ圃場に石灰窒素を入れたのか?

さっそく岡安先生に...

1.ホウレンソウは適正PHが他の作物よりも高く(〜7.0)、土のPHを標準値よりも1.0上げる必要がある。

そこでまずは苦土石灰(Mg・Ca)を使用、10aあたり100kg散布すると、PHは0.5ほど上がります。さらに0.5上げるためには、カルシウムを入れなくてはなりません。ここで苦土石灰を用いると、PHは上がりますが、苦土(酸化マグネシウム)が過剰になり、マグネシウム障害が予想されます。そのためには、消石灰(Caのみ)を10aあたり40kg散布する必要があります。PHのみを考えると、苦土石灰と消石灰の2種類を使用すれば事足ります。

2.ホウレンソウは窒素が足りないと葉の緑色が出にくい。

窒素分を好むため、8-8-8の有機化成肥料を大量に用いると、リン酸やカリウムを過剰に入れる事になります。窒素のみを入れたいときは硫酸アンモニウムを入れる必要があります。肥料を考えると、8-8-8の有機化成肥料と硫酸アンモニウムの2種類を使用すれば事足ります。

まとめると、
苦土石灰と8-8-8の有機化成肥料を、頻繁に使用する肥料と考えるなら、その他余分に消石灰(Ca)と硫酸アンモニウム(N)を準備する必要があります。その代わりに石灰窒素(Ca・N)を用いれば、肥料は1種類で事足ります。苦土石灰・8-8-8と併用する事により、Ca・Nを2倍に投入でき、濃度障害が出ないという事です。肥料代と散布の手間の節約につながるわけです。

えぇ、とても納得です...
物事、ここまで腑に落ちたのは、何年ぶりか(笑)
腑に落ちない事が多すぎる世界ばかり覗いていたせいでしょうか。

医療や歴史も奥深いですが、農学も負けずに深いものです。
植物体の細胞の話から、気候まで。まさに宇宙レベルの話ですね!