2014年9月20日土曜日

コカブ;横縞症の発生について

今日は、横縞症の発生に関する2本目の論文を読んでみました。「コカブ横縞症に対する複数の発生要因の相互関係」千葉県農業総合研究センター(2008)。

この研究では、土壌水分の影響、土壌水分変動の影響、土壌乾燥条件下における作型の影響、夏どり栽培における被覆資材の影響、作型と土壌pHの影響について、試験を行っています。


【試験内容】
  1. 灌水区と無灌水区を設け、灌水区には、pF値2.0を目安に1回当たり20mmの灌水を行う。
  2. 少量灌水区と無灌水区を設け、少量灌水区には、pF値2.5を目安に1回当たり5mmの灌水を行う。
  3. 春どり、夏どり、冬どりの3作型を土壌乾燥状態で栽培管理し、播種後10mm灌水し、その後はpF値3.0を目安に1回当たり5〜10mmの灌水を行う。
  4. 夏どり栽培において、遮熱区(トンネル被覆)、マルチ区、対照区の3区を設け、20mm灌水。
  5. 春どり、夏どり、秋どりの3作型に、低pH区と高pH区を設け、生育期間中の灌水は行わない。

【結果】
  1. 灌水区では横縞症発生率48%であるのに対し、無灌水区では72%であった。
  2. 少量灌水区では発生率76%であるのに対し、無灌水区では60%であった。
  3. 夏どりでは発生率31%であったのに対して、春どりは6%、冬どりでは1%であった。
  4. 遮熱区では2%、マルチ区では51%、対照区では37%であった。
  5. 夏どり栽培における発生率は、低pH区49%に対し、高pH区82%であった。春どりはそれぞれ、1%、3%、秋どりは共に0%であった。

【考察】

試験1.より、横縞症の発生が認められる根部肥大初期に当たる播種後19日以降のpF値は、灌水区1.8、無灌水区2.6と乾燥状態であった。発生率は、灌水区に比べ無灌水区で大幅に高まった事から、土壌の乾燥により、横縞症の発生が助長された。これにより、土壌の乾燥は横縞症発生要因のひとつと考えられる。

試験2.より、根部肥大期の播種後、22〜27日の間におけるpF値は少量灌水区および無灌水区ともpF2.3以上の乾燥状態で推移したが、その変動幅は、少量灌水区の方が大きい。無灌水区に比べ、少量灌水区での発生率が高い事から、土壌が乾燥状態にある場合には、土壌水分の変動が大きいと横縞症がより発生しやすいと考えられる。

試験3.より、温度条件の異なる3作型の土壌乾燥条件下の栽培において、横縞症は地温が最も高く推移した夏どり栽培にのみ多発したことから、土壌水分に比べて温度の影響が強いことが明らかとなった。

また、試験4.より、地温が高く推移したマルチ区、対照区、遮熱区の順に横縞症の発生が多かった。マルチ区は、pF値が対照区に比べて低く湿潤状態で推移したにもかかわらず、横縞症の発生が多く、高地温の影響を強く受けた。このことから、土壌水分に比べて温度の影響が強いことが明らかとなった。

試験5.より、夏どり栽培では、低pH土壌でも高温の影響で横縞症の発生が助長された。このことから、横縞症の発生に対しては、土壌pHに比べて温度の影響が強いことが明らかとなった。

これらの温度と土壌水分または土壌pHの相互関係から、横縞症の発生に対しては、発生要因である高温・土壌の乾燥・高pHのうち、いずれも高温の影響が最も強かった。横縞症の発生に対する主要因は、生育期間中の高温であり、土壌の乾燥と高pHは高温条件下における助長要因であることが明らかとなった。また、各種被覆資材を用いた夏どり栽培試験において、気温に比べて地温の試験区間の差が大きかったことから、高温の影響は高地温によるものと推察された。このことは、横縞症の発生位置が肥大根部の地中部分であることからも判断できる。


そう、土壌の乾燥状態は、横縞症発生の助長要因であったのです。今回の夏どり栽培では、土壌の乾燥が主要因であると考え、湿害が出るほどにひたすら灌水を行ってきましたが、それは間違いでした。寒冷紗の上に遮熱資材を張らねばならなかったのです。炎天下のもとでは、遮熱資材なしでいくら灌水しても、一時的に地温は下がるものの、すぐにもとに戻ってしまうのだと思います。夏どり栽培は、生育期間全般において遮熱資材で被覆しなければならない(曇りや雨天時、朝夕を除く?)となると、遮光の具合も考慮しなければなりません。論文では、こう締めくくっています。「横縞症の防止対策としては、主要因である高地温を抑制することが最も有効と考えられる。この遮熱資材を用いた地温制御による防止法については、根部の生育遅延を伴うため、現在継続して試験を実施している。」遮光率の異なる資材を組み合わせ、光量を測定しながらの試験なんでしょうか...

それにしてもこの論文では、あっと驚く結果が随所に出ていました。例えば、試験2.の結果より、土壌水分の変動が大きい少量灌水区において発生率が高い事から、土壌が乾燥状態にあるときには、わずかな灌水でも横縞症の発生につながる可能性がある事。試験4.の結果から、マルチ区の方が対照区に比べ、高地温であった事、など。これについては、マルチ被覆により、土が蒸れ、地温の上昇につながったのかと想像しています。

この論文の結果と今回の夏どり栽培の結果を総括すると、遮熱資材による被覆を怠った事が横縞症の直接の原因であった事。また、過灌水により、生育の遅れ・細菌による病気の発生を引き起こした。対策としては、遮熱資材による被覆に加え、播種前の十分な灌水により、生育初期に必要なある程度の土壌水分を保つ事が必須であると考えます。

以上! 夏のコカブ栽培の反省を終わりますm(_ _)m