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2014年10月18日土曜日

パイプハウス;台風対策について

大型の台風も過ぎ去り、日に日に秋が深まっていくのが感じられます(^^)ゆうきファームは最小限の被害で食い止める事が出来ました。去年の大雪以来、自然災害に対するパイプハウスの補強策を常に考え、その都度、自腹を切ったり、なけなしの資金のなかで実行に移してきました。この大型台風を乗り切った事に寄り、補強策について自分の中である程度系統的に整理できました。去年の研修以来、岡安先生から習った知識と掛け合わせ、ゆうきファームのハウス写真とともに列記したいと思います。

掲載されている図面は、全て鳥取県農業気象協議会・鳥取県農林総合研究所「強風に対するパイプハウスの被害対策技術」(2013)(http://db.pref.tottori.jp/pressrelease.nsf/5725f7416e09e6da492573cb001f7512/5d20d99f2c07d7f149257b43001b4be3/$FILE/4.pdf)からの転載です。

ここでいうパイプハウスとは、パイプの径が19.1mm、22.2mmであり、ハウスの間口が2間、2.5間、3間の場合に限ります。素人が建てることのできるハウスの大きさだと思います。対策は、大きく分けて【風対策】【大雨対策】【雪対策】に分類できますが、そのほとんどが風対策になると思われます。順に紹介します。


1.天井ビニールの浮き上がり防止 


天井ビニールが風であおられないよう、防虫ネットを使用してハウスの最下部(腰巻きの上部)から反対側の最下部(腰巻きの上部)までをきつく固定します。15mのハウスで5カ所程度。このとき、サイドビニールは全開の状態にします。サイドビニールを閉じた状態で固定すると、補強が終わったあとにサイドビニールが上がらなくなります。


2.ドミノ状の倒壊の防止 


こちらも風対策。ハウスの妻面にかかる風の力(入口や出口を押し倒そうとする長辺方向の力)に対し、妻面と曲パイプを固定する事により、下の図のようなハウスの倒壊(ドミノ状態)を防ぎます。
この補強は、ハウスの骨組みが完成した時点(一切のビニールを展張する前)で、即、直管を手曲げして入れます。先端は、地中に深く差し込み、妻面にかかる力を地面に逃がしてやります。報告書などでは、「筋交い」と表現される補強策です。


3.横倒しの防止 


その一方で、こちらは横風への対策「クロス」です。片方の曲パイプの上部から、もう片方の曲パイプの肩に向かって直管を通し、交差する部分をクランプやボルトで固定します。横からの強風で倒壊するのを防ぎます。

特に豪雪地帯では、横風による雪の吹きだまりが倒壊の原因になる事が多く、重視されている対策のようです。この「クロス」 は、ハウスを上から押しつぶそうとする天井からの力(雪)に対しても効力があるため、どことどこをクロスさせれば補強が有効になるのか、正直迷います。本数としては、ゆうきファームでは15mのハウスで7本使用しています。


4.入口出口の破壊の防止 


こちら、とても原始的な方法で、どの報告書にも載っていませんが(笑)、入口・出口につっかい棒をして、地面との間に板をかませ、妻面が破壊されるのを防ぎます。入口出口が破壊されると、正直、気力が失せます(^^)特に、南北方向に長いハウスは、台風の南風と北風に要注意です。入口出口、それぞれ4本は必要です。この対策により、2の「筋交い」がより有効なものになります。


5.浮き上がりの防止(1) 


ゆうきファームのように、地形的な問題からパイプをほとんど地中に挿すことが出来ない場合、強風がハウスの中に侵入すると、ハウスが内側から持ち上げられ、そのまま「空飛ぶハウス」になってしまう恐れがあります(^^;)そんなとき、1m程度の直管をハウスの内側から曲パイプにクランプで固定し、なるべく深く地中に打ち込みます。使用する直管は多ければ多いほど強化されます。入口出口側も、それぞれ4本程度補強します。


6.浮き上がりの防止(2) 



こちらは、上の対策のだめ押しになります。内側からの杭だけでは、浮き上がりに対して十分でないと判断したとき、外からマイカー線で固定する方法です。ハウスから15cm〜20cm程度離れたところに、らせん杭(スクリュー杭)をハウスの両側それぞれ7本から10本程度ねじ込み、杭の上端の穴に直管を通し、天井をつたってマイカー線で固定します。使用する直管は太ければ太いほど(足場用の単管など)、マイカー線の引きによるたわみが少なくなります。15mのハウスで、15本ほどマイカー線を引っ張っています。ゆうきファームでは、3棟全てのハウスにこれを施したので、ビバホームのらせん杭が42本 全部なくなりました(^^)


7.雨対策 

正直、ハウス周りに溝を掘り、天井から落ちる雨を溝に誘導するしかないと思います。でも、これをやると溝内に雨が溜まり、溝が浅い場合は最悪、地中への浸透が間に合わずにあふれる可能性があるので、あらかじめ溝に汚泥ポンプを突っ込み、発電機とつないで、いつでもエンジンをかけてゴミ穴へ排水できるようにする必要があると思います。ゆうきファームでは、前々回の台風18号において深さ30cmの溝から雨水があふれ、至急排水を行いました。でも、通常のホースなんかをつないでいたため、とても排水が間に合いませんでした。高圧の汚泥ポンプと、直径5cmくらいの耐圧ホースが必要になると思われます。正直、溝を掘るのはある種の賭けです。ハウスを高台に建て、雨水を自然に浸透できるのならば、そのほうが良いかと思います。雪の場合はまた別ですが...


8.雪対策 

最後はこれに尽きるでしょう。後にも先にも、こんな写真は1回で十分です。

 資材庫、倒壊。
 育苗所、倒壊。

トマトハウス、倒壊。
今年はもう潰しません。頭の中にはあります。あとは実行に移すだけです。

この劇的なハウス倒壊以来、いろいろと補強対策を考え、実行してきましたが、これで完璧という対策はないと思います。ハウス全体を覆うシェルターがあれば別ですが、そういうわけにはいきません。自然災害が来ると分かった時点、あるいは予測できる時点で考えられる被害のリスクをひとつずつ丁寧に、そして完璧に潰すことが大事なんだと思います。自然災害が通り過ぎるまで、どこか心の中で、「次はどこがやられるか?自分だったらどこを狙うか」と問いかけ、常に緊張の糸を張っておく事が大事なんだと思います。

それにしても、たかだか2間や2.5間のハウスに、こんなにも手間ひまかけていいのか??とふっと考える事があります 笑 でも、潰すよりはマシですから...