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2014年5月10日土曜日

光合成と転流

先日、大玉トマトの樹勢コントロール方法のひとつに、思い切って節を伸ばしてしまうという方法があると教えていただきました。そのためには、最適な環境を整えてやる事、とのことでしたが、具体的にどういうことなのか。


「光合成と転流、ビニールハウスの役割」について教えていただきました。なぜ栽培時にビニールハウスを使用するのか。雨風をしのぐ・害虫から作物を守る・生育のために温度を上げる...単にこれだけでなく、「光合成と転流」という重要な概念が存在していました。植物体の草丈は昼から夕方にかけて(PM3時頃から6時頃)伸びると同時に、葉の栄養が流れ出します。

転流とは...光合成により生産された光合成産物が、ソース器官である成熟葉からシンク器官である成長点、果実、根へ移動すること。温度は転流速度と分配に最も重要な環境要因です。

【転流の適温は光合成の適温より高く、成熟葉で作られた同化産物は温度の高い部位に移動する】

光合生産物の転流がさかんに行われる午後(夕方)は、ある一定の気温(20℃程度)が必要になります。しかし、作物がハウスで覆われていない場合、時間の経過とともに気温はぐんぐん下がり、転流に必要な気温を長時間にわたり維持する事は出来ません。

そこで、ハウスのサイドビニールを早い時間に閉め、ハウス内に暖かい空気を溜め込むことにより転流に必要な気温を確保、ハウスがないときに比べて長時間の転流を促すことができます。

これは、朝方の光合成前の気温の上昇にも同じ事が言えます。ハウスで覆われていない場合、日の出から光合成に必要な気温・湿度に達するまで一定の時間がかかりますが、ハウスのサイドビニールを閉め切っている場合、ハウス内の温度上昇はとても急激です。1分1秒でも早く、光合成に必要な温度まで上昇させる事ができます(「早朝加温」)。

つまりハウスのもっとも大きな役割は、いかに早く光合成産物を作り出すか、2つ目に転流の時間を長くすることに集約する事が出来ます。この理屈を知ると、なぜハウスのサイドビニールの開け閉めが必要なのか、そして開け閉めのタイミングはどうするべきか、が見えてきます。


参考:植物基礎講座 植物の成長と温度(福田 直也:筑波大学)